春のきざし
土手を歩く
菜の花が咲こうとしている
春はすぐそこまで
耳をすます
鳥たちの歌が元気
春はすぐそこまで
目を瞑る
風が匂う
春はすぐそこまで
春のはじまる日
灰色の空を掴むように、
灰色の大きな欅の木が、
葉のない枝々を、投網のように
いっぱいに投げていた冬が、
その日、突然、終わった。
そして、空いっぱいに、
微かな緑の空気が、欅の枝々に
刺繍のようにまつわって広がっていた。
樹の下で、思わず、立ちどまって、
見上げると、やわらかな
春の気配が、一度に、
明るい雨のように降ってきた。
~ 中略 ~
連載:生命の詩(いのちのうた)