追憶①~彼女のほほえみは~イタリア・フィレンチェ

ビードロガラスの窓辺から

時を積んだドウーモの鐘の音が
しなやかな素足で
しのびこむ


「彼女」がそこにいることは
聞いていた
でも
なかなか会えない

宮殿(ウフィッツイ)の大きな廊下の
角を曲がったところに
ふっと
不思議な「気配」がする

薄紅色の花びらが空間を舞い
リュートの音色がきこえるような

少し薄闇の中に

「彼女」
はいる

彼女の名は
「プリマベーラ(春)」

手を広げて
抱きしめたい衝動こみあげて
逆に
巨大な自由の時代に生まれた
象げ色の胸に
全身まるごと

「呑まれる」

そのほほえみとともに


圧倒でも
驚きでもなく