「創作詩」の日記一覧

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愁色の日

あの日と同じ季節が巡るたび 蘇っていた記憶も いつしか色を無くし始め 思い出そうとしなければ ここに君は現れてはくれない もう二度と逢えない人 願っても 名前何度呼んでも 忘れないと 指切り交わした約束さえ 時間は奪っていく 拾い集める欠片は君への想いだけなのに それさえも いつかこの手から溢れる方が増えていくのか 例えば僕が一人、君が一人 いなくたって街は 何も変わらない、いつ…

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来る秋・ある夜の内緒話(~詩2編~)

ある夜の内緒話 それは(虫たちの秘密の内緒話) だれも聞いてはいけません。 てぃりてぃりてぃり ジイージイージイー ツーツーツー もくもくの入道雲とおなじ歩幅の 少年たち (宿題はおわったのかしら) 夜明けに いつもひとりブランコ揺らしていた 赤いブラウスの乙女 (心はまだゆれうごいているのかしら) 夕暮れに燃え立つような(さるすべり)を ずっとながめていたおじいさん (想い出はよみが…

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追憶①~彼女のほほえみは~イタリア・フィレンチェ

ビードロガラスの窓辺から 時を積んだドウーモの鐘の音が しなやかな素足で しのびこむ 「彼女」がそこにいることは 聞いていた でも なかなか会えない 宮殿(ウフィッツイ)の大きな廊下の 角を曲がったところに ふっと 不思議な「気配」がする 薄紅色の花びらが空間を舞い リュートの音色がきこえるような 少し薄闇の中に 「彼女」 はいる 彼女の名は 「プリマベーラ(春)」 手を広げて…