連載:映画

「まるで映画のように」531

「ほら、こうやって黒いのだけ取るのよ。」
マリコさんは得意げだ。
「あっ、ほろほろっとすぐに取れますね。」

私は地面にこぼれた黒い実を拾おうかと思ったが止めた。取り切れないほど生っている。日差しは強く汗ばむほどだ。

「甘いですねえ。」
籠も持っていたが、口にも放り込む。子供の頃摘んだ実はもっと大きかった気がするが、味は同じだ。強い酸味とそれを美味しく感じさせる甘さ。買ったお菓子のようにヒトに迎合するマイルド感がない。これには自然の物が持つ強い自己主張がある。ハナ子さんも口に入れる。
「あら、ほんと。甘いわぁ。」


今まで童謡「あかとんぼ」を歌う度に