妄想(ゆめ) ~星に願いを~

運がよかった。
拘置所は、無関係な俺でも、その男と面会することを許してくれた。

さらに幸運は続く。
面会者と容疑者を隔てる透明アクリル板が、モーゼの眼前で海割れが起こったように、念力を使わずともガラガラと音を立て、崩れ落ちていったのだ。
おかげで簡単に対面室内に侵入できた俺は、あっけにとられて茫然と椅子から立ち上がっている男のみぞおちに膝蹴りを決めた。
間、髪を容れず、返す刀でよろけた男の太ももにハイキックもくれてやった。
けれども敵もさる者、俺の軟(やわ)な蹴りなど意に介さず、体勢を立て直して抵抗する。
鬼の形相で、俺のこめかみを殴りつけてきたのだ。