玻璃越しに海を眺めて日の清か

 友恋し雑木紅葉の夕冷えは  広谷樵人

 夕冷えて鶏頭の朱の改まる  馬場移公子

 くれなゐをしぼりて楓冷ゆるかな  鷲谷七菜子 游影

 山影の夕冷え犇と二期田刈る  千代田葛彦 旅人木

 富士うつし富士の伏流水冷ゆる  川本朋紘

 風冷えて蕎麦うまき日の上根岸  高澤良一 随笑

 いづち啼く河鹿や倚りし柱冷ゆ  伊丹三樹彦

 冷やかに忘れ潮あり岩畳  高橋淡路女 梶の葉

 冷やかに波打ち際の白さかな  アロマ

 冷やかに月光降りぬ杉襖  大井澄緒

 玻璃越しに海を眺めて日の清か アロマ

 冷やかに青める玻璃の器かな  上村占魚