赤蜻蛉一匹飛んでもう残暑

 失はれゆく空地あり赤とんぼ  遠藤忠昭

 赤蜻蛉一匹飛んでもう残暑  アロマ

 安珍を焼いて来しかな赤蜻蛉  鳥居美智子

  小春日や石を噛みゐる赤蜻蛉  村上鬼城

  屋久島や海より生るる赤とんぼ  秋篠光広

 山の日に染めあげられし赤蜻蛉  吉村ひさ志

  山の香と言ふは樹の香や赤とんぼ  小林樹巴

  山川と夕日をわかつ赤とんぼ  滝佳杖

 川に尽く細道一つ赤とんぼ  横山美代子

 影を出て赤蜻蛉となりしかな  高木晴子 花 季

  後の世を噛み捨て来るや赤とんぼ  永田耕衣

  手の届く高さに群れる赤とんぼ  吉