連載:運慶から

「胸が縮こまる」

ずっと部屋にいる婆様の顔を見に行った。婆様は車椅子に座ったまま、泣き顔を作っていた。
「今、向こうでみんなで歌を歌ってますよ。一緒に歌いませんか」
「そうだね、一人でいたら胸が縮んじゃうね」


尾瀬を歩いているとき、何故こんなキツいことをしているんだろうと思った。もちろん生きていればこそだ。4年前偶々胸のしこりに気付いていなかったら、今頃ステージが進んで手遅れになっていた。

あのとき考えられないような偶然が続いて最短で治療に入ったが、きっかけは介護現場で働いていたからだ。一度書いたから省くが、薬の副作用を目の当たりにした。

登りや下りのキツイときほ