H・ハメル『朝鮮幽囚記』をめぐる考察(その2)

(前日記に続いて、2つ目の問題を取り上げる)

3:朝鮮はハメルら一行の知識・技術を受容したか
 何冊かの朝鮮史・韓国史の通史を見るとハメルら一行の漂着事件を記述しているものが見当らない。朝鮮王朝史として朝鮮王朝500年に限った歴史の図書にもみられない。これは彼等の13~15年の滞在が朝鮮の歴史に痕跡を残さず、後世に影響を及ぼさなかった証拠のように見える。小学校歴史教科書に出てくるハメル一行について見ると、18世紀の実学思想、19世の異様船の出没と欧米列強の開国要求へとつながる一連の歴史の流れの序奏として子どもたちの興味を引くようなかたちで描かれている。