ドン・キホーテとドゥルシネア姫

 深水黎一郎の「虚像のアラベスク」を読了した。著者は、メフィスト賞出身のミステリー作家であるが、慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得退学(仏文学専攻)、パリ第12大学博士課程研究専門課程(DEA)修了という異色の経歴の持ち主で、「薀蓄」系のミステリーが得意とされている。本書は、薀蓄系の「芸術探偵」神泉寺瞬一郎が登場する、バレエをモチーフとする中篇集である。
 「ドンキホーテ・アラベスク」:パリの国立オペラ座バレエ団で日本人初のエトワールになった烏丸大哉が、三十代の終りに帰国して創立した烏丸バレエ団が、創立十五周年記念で、「ドン・キホーテ」の公演を開催す