露地菊の紅さに猶も夕茜

 菊咲くや舟漕いで童子酒買ひに  菊 正岡子規

  菊咲くや草の庵の大硯  菊 正岡子規

 菊咲けりいのち僅かに傾けて  松下金鹿

  菊咲けりふるさと人は老いてやさし  福田蓼汀 山火

  菊咲けり吾が終の家建つると娘  小松崎爽青

 菊咲けり悪路つゞきの家々に  右城暮石 声と声

  菊咲けり故郷に帰らんかと思ふ  福田蓼汀 山火

 菊咲けり産月の腹さすりをり  岸田稚魚

 菊冷や地球を縛る飛行雲  嶋田麻紀

 菊冷ゆる夜更は珠のわが時間  福永みち子

 菊咲いて滅びの力芯にあり  水田光雄

  菊咲いて濃やかなりし夕陽