ほろほろと萩散る秋の夕べかな 

 瞬くにつれ刻刻と秋の暮  三橋敏雄

 矢印の方へは行かず秋の暮  高橋龍

 坂道の薄靡いて秋の暮れ  アロマ

 磯の井の覗けば深し秋の暮  酒井美幸

  秋てふ文字を百たび書きて秋の暮  高柳重信

 秋刀魚焼く匂い立ち込め秋の暮れ  アロマ

 秋のくれ人盡く家に入る  松瀬青々

 秋の暮引出しの鈴鳴りたがる  小檜山繁子

 秋の暮柱時計の内部まで  三橋敏雄(1920-2002)

 秋の暮柿の一つ目机上にす  村越化石 山國抄

  秋の暮業火となりて秬は燃ゆ  石田波郷

  秋の暮水のやうなる酒二合  鬼城

 秋の宵ワイン片手に