梅干と鰯煮付けて秋の暮れ

 ふるさとや東風寒き日の鰯売り  鈴木真砂女

 ぶちまけし鰯の渦や雁渡し  橋本榮治 麦生

 ぶちまけてなだれひろがる鰯かな  岡田耿陽

 よく釣れて闇に光れる鰯かな  松原赤実果

 よそ者とうとまれながら鰯引く  足立堂村

 わが町の闇夜をはねて鰯たち  坪内稔典

 トラックヘ荷揚鰯がどしや降れる  槫沼けい一

  一ト塩の鰯焼きけり十三夜  野村喜舟 小石川

  一合を愉しむ潤目鰯かな  山崎ひさを

 一本の鰆提げ立つ鰯舟  後藤夜半 底紅

 三銭の鰯包むや竹の皮  正岡子規

  下の魚の鰯うつくし花ゆふべ  篠田悌二郎 風雪