「空の巣症候群」と母性

あの日から20年以上の歳月が流れた。
東京駅八重洲南口から出る北国行の夜行バスに乗るために
私は停留所に佇んでいた。

夜の9時半だというのに、大都会東京は眠らない街だった。
夜の帳はすっかり降りても色彩を競うような光の煌めき。
行き交う人々の喧噪に、私は暫し虚しさを忘れていた。

その年の3月末日、東京に就職する娘を送った私は、翌日の仕事を休むことも出来ないので、高速バスで帰ることにした。

社員寮がある新宿の部屋を確認して、必要な電化製品や最低限の家財道具を揃えて上げて、慌ただしくふたりで
夕食をとり、娘とは新宿で別れた。

「送って行くよ」と云って