秋曇り紅葉黒ずむ木蔭かな 

 秋曇とてはつきりと塔は見ゆ  後藤比奈夫

 秋曇の幹の褐色ドラン死す  桂信子 女身

 秋曇る一本松の岩裂く根  西東三鬼

 秋曇男の裏地いつも紺  香西照雄 素心

 秋曇売れし後拭く屋台店  中村草田男

 船笛の頭上に割れて秋曇し  鷹羽狩行

 滝上や大瀬のよどむ秋曇り  飯田蛇笏

 啄みてただ秋陰の烏骨鶏  石田波郷

 雑魚ばかり釣れる河口の秋曇り  橋閒石

 山雀の眉間の白や秋曇  原石鼎 花影

 秋陰の身構へもなき烏城かな  山田みづえ 草譜

 秋陰の濃く通夜堂といふとかや  後藤比奈夫

 秋陰やある日銀座で鴉啼き  鈴