一の酉昔の風情楽しんで

 あたらしき電球吊られ一の酉  山田京子

 つややかなおかめに出会ふ一の酉  大口公恵

 はしたなく雨びちゃびちゃと一の酉  鍵和田[ゆう]子 浮標

 バラ銭が笊に鳴り落つ一の酉  高澤良一 暮津

 むさし野の杜華やかに一の酉  杉山岳陽

 やはらかに人押し合ひて一の酉  中村金鈴

 一の酉あたたかければ夜を待つ  長谷川かな女 花寂び

 一の酉はぐれし一人おきて別る  小池文子 巴里蕭条

 一の酉もまれて厄を貰ふまじ  大木あまり

 一の酉過ぎて蕎麦湯の淡き味  吉田鴻司

 一の酉菊も売るなる社道  阿部みどり女 笹鳴

 一の酉星