読書日記 『阿弥陀堂だより』南木佳士

つまづかない道なんてありはしない。行きつく先が見える道などというのもありはしないだろう。大切なのは、つまづいたときになにを為すべきかをしっかり考えることだ、この小説は教えてくれている。

登場するどの人物もが、わたしたちの身の丈と同じ人間だ。いや、私たちそのものであるかもしれない。このことがずいぶん私たちを安心させる。

昨今のありうべくもない人物設定をする小説や、いたずらにペンをもてあそぶだけの書き手をあざ笑うかのような自然な筆の運びを、南木さんはする。

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