『 ル・シッド 』~ 義に殉ずるか愛に生きるか

フランスの友人達とこの古典的傑作を論じていると、今でもフランスでは広く親しまれ、しばしば上演もされるという。彼らにとって寧ろラシーヌよりも親しみ、また『 ル・シッド 』のなかのあまたの名セリフは暗誦の対象として教養人のたしなみになっているようだ。コルネイユの戯曲はまずこれから読むのが順当だろう。読み進めているうちに、この作品を暗示し、特徴づける表現に出会う。例えば、名誉を守る、誉れとなる、恥辱を受ける、体面を汚す、というものから、勇猛果敢、剛勇無双、勇士豪傑、といった勇まし語句が並ぶ。これはこの作品の悲壮的な特徴を表すものだ。
聡明で美しいシメーヌと若く