連載:介護

「辞めなくてよかった」

スーパーを出て広いバス通りを歩いていた。家々の屋根の上に信じられない程大きく赤い満月が見えた。アメリカでは皆既月食が見られ、スーパー・ブラッドウルフムーンというらしい。この月だ。

前を歩く爺様は両手にスーパーの袋を提げている。重そうだ。
「凄いですね、赤い満月。」
爺様は顔を上げたが、それほど感動しているようには見えない。私は昨日の月を思った。


仕事帰りだった。いつも寄るスーパーを出て、駐車場を横切った。広い空の向こうに満月が見えた。よかった、私を迎えてくれるものがある。

午後になって、一日中ベッドに横たわっている婆様の部屋に行った。寝ている。声