連載:日常3

「安上がりのオカン」

向き合った肉厚の葉の間から白い頭を覗かせている。まさか。これだけだろうと思って隣を見たら、やっぱりある。まさかまさか、こっちの鉢は出ていないだろうと思ったら、隣の鉢の二株にも白い頭が見えている。

花が咲かないからと捨てる気にもなれず、葉を楽しむつもりでずっとそのままにしていた君子蘭を、去年の夏株分けして二つの鉢に植え替えた。ホームセンターで君子蘭用の土を買い、黒く四角い縦長の鉢にした。

寒くなり始めたころ、二鉢をリビングに入れ、窓際に置いた。固形肥料を数粒やり、時々思い出しては、水をやった。たったそれだけで何年も葉っぱだけだった植物が蕾を持った。