さんが書いた連載日常3の日記一覧

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「来年も必ず」

「桃太郎」が二鉢咲いている。リビングからよく見える位置に移動した。白地に赤い線が入った「イカリ紋」も、今年初めて一輪咲いた。 ジョギングクラブの日だった。久しぶりに遠い森まで走った。先に着いていた仲間は私達を待っていて、女子4人で復路を走り出した。よく喋った。よく笑った。 私は追いついて行けず、最後になった。もっと遠くまで行った仲間も追いついて来て、私を追い越して行った。 歩道を歩く女性…

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「幾つになってもお雛様」

市の体育館に市民から寄付されたお雛様が飾られている。飾りつけに仲間が参加した。クラブの日、体育館まで走ることになった。 すぐに汗が流れた。今年は一度も庭の水が凍っていないし、仕事の日は6時半に家を出るのだが、一度も畑が真っ白にならなかった。それでも早朝は手袋を二重にしても指先が痛くなった。霜が降りるほど寒くなったらもう指先が持たない。自転車のハンドルを覆うあれを買おうと思っていたのに、結局買わ…

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「春が来てしまった」

空を背景に歩いて来るその姿に妙に引き付けられた。普段は殆ど人など歩いていない歩道だ。左右に大きく揺れているあの歩き方、見覚えがある。そうだ、あの人だ。私は小学生のように手を振った。 職場を出て自転車を漕いだ。相変わらず車の往来は多いが、歩道には誰もいない。十字路は坂の上にある。気張れば頂上まで降りずに行けるが、坂に差し掛かってすぐに降りた。頑張る気になれなかった。自転車を押して歩き出した時だっ…

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「安上がりのオカン」

向き合った肉厚の葉の間から白い頭を覗かせている。まさか。これだけだろうと思って隣を見たら、やっぱりある。まさかまさか、こっちの鉢は出ていないだろうと思ったら、隣の鉢の二株にも白い頭が見えている。 花が咲かないからと捨てる気にもなれず、葉を楽しむつもりでずっとそのままにしていた君子蘭を、去年の夏株分けして二つの鉢に植え替えた。ホームセンターで君子蘭用の土を買い、黒く四角い縦長の鉢にした。 寒く…

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「とろける大根」

仕事帰りに寄るマルエツで、美味しそうなお惣菜を見つけた。豆腐と大根、ゆで卵を濃い色で煮付けている。入口の方に戻り、木綿豆腐を籠に入れた。 卵はパルシステムの宅配ものがまだそのままだし、大根も4本もある。 この大根は自転車で帰って来る時、近所の小さなお店とも言えないようなお店で見つけたものだ。風の強い日だった。爺様婆様が3,4人集まって何やら話しているので、自転車を停めた。今年は「行列には並ぶ…

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「アオゲラは青くない」

朝起きた時は真っ暗だし、ご近所迷惑だから雨戸は開けないが、出勤する6時半前には開ける。まだ暗い。西の方向に月が見えるとそれだけで得したような気分になる。 やはり青くは見えない、白だ。 「月がとっても青いから」を思い出す。 「お気に入り」さんが「アオゲラ」をアップされた。この名前は聞いたことがあると思ったが、写真の鳥は青くなかった。赤い部分と緑色の部分がある派手な鳥だ。 「中国から伝えられ…

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「プライドは捨てても」

一升瓶を持って注いで回る男性が言った。 「プライドなんて持ってらんないよ。」 すると私の隣にいた男性も言った、 「そうだよ、プライドなんて持ってたって何の役にも立たないよ。」 紙コップに半分ほど注がれたお酒は驚くほど美味かった。 駅伝大会のご苦労さん会だった。私達は選手の送り迎えなどサポートに回ったが、クラブの総力を挙げて取り組んだ。 12月に発表された選手は、皆一様に練習に気合が入った。…

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「カッコイイ70代」:52,1

いつまで経っても来なかった。違うコースにでも行ったのだろうか。今までなら私と一緒に走り出しても、私はすぐに周回遅れになり、みんな私をまた追い越して行った。だが、カントクが一緒に行くとは思えない。 何度かきょろきょろ後ろを見たが、林の中はしんと静まり返っている。この林は新年になったら綺麗に雑木が刈り取られ、見通しが良くなっている。このまま一人で走ろう。 最初の2周は出来るだけ速く走った。駅伝と…

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「キョウイクとキョウヨウと言うけれど」

いつからこんな風にその年人気のあったドラマを一挙に放送するようになっていたのだろう。 「赤毛のアン」を訳した村岡花子を主人公にしたNHKの朝ドラで、白蓮の最初の夫役をやった吉田鋼太郎、と、こんな風に私は認識しているのだが、彼は、なかなか色気のある役者だと思うが、彼が息子のような若い「男性」に恋する『おっさんずラぶ』を見た。 こんなのをテレビで堂々と流す時代になっておったのかと、時代遅れの頭を…

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「苦くて甘い」

4時に仕事が終わり、外に出る。自転車に跨った。今日も疲れた。Toshiがアンジェラ・アキの「手紙-拝啓十五の君へ」をカバーしている。 「今負けそうで泣きそうで 消えてしまいそうな僕は 誰の言葉を信じ歩けばいいの?」 サビだ。一緒に歌うオカン。 「大人の僕も傷ついて 眠れない夜はあるけど 苦くて甘い今を生きている」 今日はお風呂が嫌いな婆様が入った。それは嬉しいが、その前に何とも「苦くて甘…

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「心に響く歌声」

中島みゆきの歌は中島みゆきが歌うからいい。そう思って来たが、もっと凄い歌手がいた。 息子の車に乗ると、いつも音楽を流してくれる。 「これ、何?刺さる。こういう意味だったんだ。知らなかった」 叫んでしまうオカン。大勢の女の子たちが短いスカート穿いて楽しそうに歌って踊る曲は、やっぱり楽しく聞いていた。NHKの朝ドラで毎日聞いていたのに。いや、聞いてなどいなかった、聞き流していた。 『人は思うよ…

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「紙飛行機」

踏切を渡ると小さな小さな鯛焼き屋がある。 「小豆を4個、二つの袋に分けてください。あっ、あったかいですね。」 私は鯛型が並んでいる銅板の上に手をかざした。 「これですよね、タイ焼きってこうして一列に並んでいるんですよね。この前甘酒横丁でたった一個ずつ焼く鯛焼き屋に行ったんです。大勢行列に並んでて。」 「ああ、あれね。ここのがもっとうめーよ。」 「そうなんです。ただ小麦粉を焼きましたっていう感…

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「どうも調子がよくない」

やっと治った。職場に行くと頭がヘンな感じになる。豆腐が水の中に浮かんでいるように、脳味噌が水に浮かんでいる感じなのだ。眩暈とは違う。頭がぐらぐらするとしか言いようがない。 休みの日に脳外科に行こうかとも思ったが、なんせビビりなので、頭のCTなんか撮ってここが少し脳梗塞を起こしていますね、なんて言われたら嫌だし、この不快感は覚えがある。現役の頃にもあった。 これを読んだ方でそれは何とかという病…

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「大掃除病」

何も予定のない日には一日家にいてゆっくりしたい。未だに10キロマラソンの疲れが抜けきっていないからごろごろもしていたい。それなのに、12月になってしまった。 オカンだって正月は綺麗にして迎えたい。リビングを片付けたいし、普段行き届かないトイレや浴室を磨き上げ、台所も本箱も押し入れももっと物を少なくしたい。もうこれは病気、大掃除病だ。 だができないとわかっている。小さな範囲だけをやる。「今日は…

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「恋人」

今朝は肌寒いと言う言葉がぴったりくる。昨日の夜からだ。天気予報は今日は30度を切ると言っている。猛暑は9月まで続くと思っていただけに肩透かしを食らった気持ちだ。今、室温は22,3度。 開店時のスーパーにすら私はワクワクできるのだ。今までは「そんな小さなこと」とどこかでバカにしていた。昨日はこんなこともあった。 映画『ミスターインクレデブル』の続編だ。10数年前偶々見たクレデブルが気に入った。…

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「測るだけじゃ痩せない!」526

涼しい。朝起きて玄関を出た。トマトは枝が鉄のフェンスからはみ出すほど茂ったが、実は割れてしまっている。 ご近所さんも出てきた。 「この涼しさが続くんでしょうかね」 「この程度じゃ許してくれないでしょ」 室内の温度計は25,1度。この気温がこれほど心地よいとは。もう30度を切ると涼しく感じてしまうこの体。人間に本来備わった適応能力だと思っていた。 休日で家にいた息子が二階から降りて来る度に言…

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「夏の光景が戻った」

レジでお金を払い自動ドアを出た。自然に両手で抱える形になった。 愛おしい。まるで赤ん坊を抱いているようだ。これか、猫や犬を可愛がる人の気持ちはこれに似ているのかもしれない。 朝出勤するときには雨は上がっていて、ちょっと強い風が吹いている程度だったので、定時に出勤となった。  そのとき、玄関前に地植えした白いタイタンビカスが目に入った。去年買った二株を、一株は鉢植えに、一株は地植えにした。…

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「休日の過ごし方」

涼しい。25,2度。湿度は82%。外は雨が降っている。 4時には目覚めてラジオを点けた。外が幾分明るんでから起きた。リビングの雨戸を開けた。 「ステージ」が地味になっている。買った花苗を蕾もろとも短く切り戻したペチュニアの白と紫が、見事な大株に生長し満開になった。毎日の花柄摘みを楽しんでいたが、また枝が伸びて花付きも悪くなった。ダメかもしれないと思いながらもう一度切り戻した。一切花がなくなっ…

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「涼しい」

「今日は涼しいって言っていいのかしら」 帰宅するとご近所さんが言う。本当に涼しい。凌ぎやすいと言いたくなる。 夕方花の水やりをすると、大抵ご近所さんも出ている。連日35度や36度が当たり前だった。テレビは38度などというキチガイじみた天気予報を平気でしていた。 それにしても体の適応力には驚く。 火曜日、都内の予報が35度の中、山手線目黒駅に集合し、目黒雅叙園やら国立科学博物館附属の自然教…