言葉狩りへの挑戦

 深水黎一郎の「言霊たちの夜」を読了した。著者は、メフィスト賞出身のミステリー作家であるが、慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得退学(仏文学専攻)、パリ第12大学博士課程研究専門課程(DEA)修了という異色の経歴の持ち主で、「薀蓄」系のミステリーが得意とされている。本書はミステリーではなく、基本的には言葉に纏わる誤解や勘違いをモチーフとしたスラプスティックなブラックジョークを描いた連作短編集であるが、最後に著者の意外な本音が現れる。
 「漢は黙って勘違い」:学生時代にボクシングをやっていた所為か、少し耳の悪い主人公の優史がラジオのニュースを聞いている。