一人乗ってホッとするエレベーター


 隙間風エレベーターの扉より  関森勝夫

 古書市の黴の香に開く昇降機  深谷雄大

 五月雨や灯して透明エレベーター  長崎小夜子

 行く年の無人に閉まるエレベーター  景山万年青

 鉱山のエレベーターに見ゆる滝  西本一都 景色

 妻とエレベーターの急行に乗る春の宵  橋本夢道 『無類の妻』以後

 参観の昇降機あり梅雨の城  宮武寒々 朱卓

 受験子をひとり乗せたる昇降機  横山房子

 秋の暮昇降機より配膳車  小林幹彦

 秋の夜のひとりに開くエレベーター  施 慶琳

 春雨に人どこか濡れ昇降機  深川正一郎

 春寒の自分を探す