「金峰山」(宮崎吉宏作)は秩父困民党の言動描く

「金峰山」 宮崎吉宏作 
「イマジネーション(山梨文芸協会機関誌)15号所収。
ー俊郎は山を指差し常之助に訊いた。
「あれは八ヶ岳だ」
ー八ヶ岳ー初めて聞く名前だった。峰頭が八つに分かれているからそう呼ぶのだという。
 俊郎はずっと左方向に視線を移した。
「菊池さん、あの、てっぺんが尖った山はなんですか」
「あれは金ぽう山だ」
「金ぽう山?金峰山(きんぷうさん)とは違うのですか」
「信州では金ぽう山だけど、山向こうの甲州では金ぷう山と呼んでいるらしい」
 金峰山だったら父親の五兵衛から聞いて知っていた。甲斐の名山だという。
 「新政厚徳」の大旗を押し立て