少し鳴く今に思えば初蝉か



 鳴き立てて保護色の蝉捕はるる  史あかり

 もののふの馳せし間道夜の蝉  寺内信

 声明と聴く蝉の声忽と止む  中原吟子

 もうすでに締め出しきれぬ蝉の声  松井洋子

 油蝉籠にじりじり煩くて アロマ

 脱稿のそのとき蝉の四重奏  泉田秋硯

 書き出しの一行さらり蝉の声  永井雪狼

 ハンカチの樹や蝉声のしきりなる  丸山照子

 朝蝉を祈りの声と聞きゐたり  中上照代

 朝蝉や物干し竿の雨雫  坂部尚子

 大樹よりどつと湧き立つ蝉の声  大森玲子

 蝉時雨都会の木々に輪唱し  アロマ

 トタン屋根鳴らせし