初秋の光浴びつつ坂下る


 初秋の伊那の谷間のまんじゅう屋  森 慎一

  初秋の千本の松動きけり  夏目漱石 明治二十九年

  初秋の四十もうとき寐覚哉  松岡青蘿

  初秋の土ふむ靴のうす埃  杉田久女

  初秋の埃もつかぬ茄子かな  中島月笠 月笠句集

  初秋の大きな富士に対しけり  星野立子

  初秋の子がふぐりさげ地をたたく  長谷川双魚 『ひとつとや』

 初秋の子に伸びるだけ桑摘まれ  萩原麦草 麦嵐

 初秋の小鯵の味も忌のこゝろ  斎藤空華 空華句集

  初秋の尚宵々を出ありきぬ  露月句集 石井露月

  初秋の屋根を鳩とぶ日本橋  長谷