お笑い芸人が神の世界

 深水黎一郎の「第四の暴力」を読了した。著者は、メフィスト賞出身のミステリー作家であるが、慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得退学(仏文学専攻)、パリ第12大学博士課程研究専門課程(DEA)修了という異色の経歴の持ち主で、「薀蓄」系のミステリーが得意とされているが、マスコミ、特にTV業界の批判を繰り返していることで知られている。本書はミステリーではなく、マスメディア批判の作品の連作中編集であり、近未来のデイストピアを描いた一種のSFでもある。
 「生存者一名あるいは神の手」:とある山村に住む樫原悠輔は、金策に訪れた伯父の家で大酒を飲み、大雨であったこと