母の掛け軸を飾る


私の母は書が好きであった。
晩年は掛け軸の表装も趣味に加わった。


葬儀の時には式場の入口に母の書を掲げた。
それには次のような理由がある。

当時、母が一人で住んでいた古民家には何十本もの自分が書き、自分で表装した掛け軸があり、その一部が鴨居などに掲出されていた。
それを来客に見てもらって、ひとり悦に入っていたのだ。

母は良くも悪くも自己顕示欲の強い人だ。
「彼女はこんなことが出来るんだ」と他人に認めさせたいタイプであった。

私の結婚式のことである、父が既に他界していたので締めの挨拶は母が行った。
息子が言うのもなんだが、実に堂々とやってくれた