長編小説『ユリアのヴァイオリン』ーー滝に落ちたあの音を探して...

「覚えたて!」

激しい過酷な練習が終わり団員が次々と帰った
リハーサル室で指揮者がオーボエ奏者に声をかけた

「はい?」

「次の曲決まったぞ」

「え、何の曲ですか?」

「おまえの曲だよ」

「僕の? え?!
まさかオーボエの?!」

「そう、なんだと思う?

「そうですねえ、ひょっとして...
まさかモーツァルトのオーボエ・コンチェルト
じゃあないですよね?」

「ははは、うん、それもいいんだがね...
たしかにコンチェルトだが・・・」

「う~ん、なんだろう?
あと考えられるのはシューベルトの
交響曲8番グレート...ですか?」

「おお、近い