戦争やあわれ

 宮内悠介の「遠い他国でひょんと死ぬるや」を読了した。著者はSF畑出身の作家であるが、ミステリーも手掛けている。本書は、戦死した詩人竹内浩三が残したかもしれない「三冊目のノート」を求め、太平洋戦争の激戦地ルソン島に渡った元ディレクターの姿を描いた冒険小説である。
 本書の主人公は、弱小テレビ番組制作会社でディレクターをしていた須藤であるが、彼は、23歳でルソン島のバギオで戦死したとされる、詩人の竹内浩三の詩を愛するナイーヴな男でもあった。須藤は、バガヤンが村長を務めるルソン島の山岳民族イフガオの村で取材を行った時、フィリピンと日本両国の間に蟠る戦争の負の