父の言葉

「牛には自分が食べる前に
餌をあげなければなぁ~」

何気なく口にした父の言葉に
やけに説得力があった

父にとって
当たり前の言葉だったに違いない
天候をいつも気に留め
米や野菜を栽培し
牛や豚を飼育し
命を育む仕事をしてきたので

父の手は節くれ立ち土の香りを放ち
顔は日焼けし深いしわに刻まれ
心も体も大地の一部に

命に対するかぎりない優しさ
大地のように広い心
全てのものに感謝する心
人として大切なものを身に付けていた

いつしか父は
自然の摂理を体得し
宗教家にも劣らぬ
敬虔の心の持ち主になっていた

他のことなど親身に考えられない
風潮の世の