藤棚は蕾小さく閃いて


     「アロマ」の句


 山葵田の水は清らか伊豆の山

 花吹雪路上を滑る城下町

 通学路朱い木瓜咲き春うらら

 麗しの春海蒼く朝の景

 囀りの煩い程に旅の朝

 梅まつり曇り空にて吾子遊ぶ

 藤棚は蕾小さく閃いて

 野道行く天道虫を肩に載せ

 葱坊主畑につんつん太ましく


   「種田山頭火」の句
   

 気まぐれの旅暮れて桜月夜なる

 緋桃しるき村の朝僧が二人行く

 沈み行く夜の底へ底へ時雨落つ

 菜屑寒き溜り水今日も夕映えぬ

 煙管たたけば寂しき音と火鉢撫づ

 稀な湯心地肌撫でて寒の空仰ぐ

 雨落ちんとす釣鐘草