久しぶりに東京に出た。
お茶の水駅から神田神保町に歩いた。
首都は静まり返って、古書の通りは軒並み閉っていた。
書店に混じって若者向けの飲食の店も多い。
MACをはじめほとんどの店が、厳しい売り上げ減を支えテイクアウトをやっていた。
10年も前にこの街で眼にしたことを想い出した。
この街を一筋入ったところに、平屋の並びに飲食の店があった。
店の前に出したテーブルで弁当を売っていた。当時は弁当売りも珍しかった。
女性が立って大きな声で。
「お米は新潟の棚田でとれました。煮物は熊本の筍。ひじきは下味を付けで――」
その素材の切りから下ごしらえ