蝉時雨さわさわ命惜しめよと



 走馬燈いのちを賭けてまはりけり  久保田万太郎 流寓抄

 蔵ひをるいのちを一分名草の芽  伊藤敬子

 蝉時雨さわさわ命惜しめよと アロマ

 魂極るいのち耀ふ雪煙  佐藤鬼房

 残菊の枯るるいのちを束ねけり  中村苑子

 紙漉のいのち梳きこむ紙のいろ  中村敏子

 詩を書いていのち知る夜のはたたかみ  津根元 潮

 煮凝やいのち重しと呟くも  角川春樹

 若きはわかきいのちをうたい夏来たる  栗林一石路

 若き日は手紙もいのち桜貝  中嶋秀子

 流れ星白く弾けて夏の宵 アロマ

 種袋切つていのちを与へけり  石川文子

 秋袷銀