茨城のおいしい卵

見合い結婚を避けるために田舎を出て、東京で洋裁学校に通っていた頃のこと。
別に洋裁が好きなわけではなかった。
というか実は大嫌いだった。
けど口実が必要だった。
ファッションの勉強は東京でなくてはと主張し、田舎にも洋裁学校はあるという親の勧めを振り切って出た。
50何年も昔の話です。

その学校で知り合った女友達の一人は茨城から通っていた。
十二単が似合いそうな色白のぷっくりした小柄な女性。
手は小さくこれもぷっくりしてまるで赤子の手のような可愛らしさがあった。
が、この手が魔物で彼女が布を触ると、まるで手品のように操ってしまう。
私はいつも感心して彼女