57、「老人と海」(ヘミングウェイ)は老漁夫の巨大魚との闘い描く

「老人と海」 ヘミングウェイ・福田恒存訳 新潮文庫
昭和41年6月15日発行
ー1匹も釣れない日が40日もつづくと、少年の両親は、老人がすっかりサラオになってしまったのだといった。
 サラオとはスペイン語で最悪の事態を意味することばだ。
 この男に関するかぎり、ただ眼だけがちがう。
 それは海とおなじ色をたたえ、不屈な生気をみなぎらせていた。
「サンチャゴ」
「1番はじめに、ぼくを漁に連れてってくれたのは、いくつのとき?」
「5つのときだ」
 これはほんとうに起こったことなのだ。けっして夢だはない。もしそれがたしかめたいならば、かれは自分の手をながめ、と