「老人と海」 ヘミングウェイ・福田恒存訳 新潮文庫
昭和41年6月15日発行
ー1匹も釣れない日が40日もつづくと、少年の両親は、老人がすっかりサラオになってしまったのだといった。
サラオとはスペイン語で最悪の事態を意味することばだ。
この男に関するかぎり、ただ眼だけがちがう。
それは海とおなじ色をたたえ、不屈な生気をみなぎらせていた。
「サンチャゴ」
「1番はじめに、ぼくを漁に連れてってくれたのは、いくつのとき?」
「5つのときだ」
これはほんとうに起こったことなのだ。けっして夢だはない。もしそれがたしかめたいならば、かれは自分の手をながめ、と