68、「日日平安」(山本周五郎著)は貧しい武士の生きざま描く

「日日平安 青春時代小説」 山本周五郎著 
角川春樹事務所 時代小説文庫
2006年11月18日発行
ー井坂十郎太が昨夜泊った宿で草鞋をぬいだ。
その男の名は菅田平野というのであった。
 「陸田さんはなんにもなさらない、超然としてかれらのするままにしているというわけですね」
「いや貴方にはわからない」十郎太は首を振った。
「日日時事みな平安なり、そう云うだけなんだ」と十郎太は唇をゆがめた。
「われわれは日日平安などと云ってはいられない、ものには限度ということがある」十郎太は眼をぎらぎらさせた。
 菅田平野は頭の中で考えていた。
 わずか1食の銭を得るため