東京士官

短歌メモから。

彼(か)のTOKYOはもはや戦場、〈崩壊〉へひた向かひつつあり、と。その夜も空軍飛行機は帝国へ還る

夕光(ゆふかげ)のポストへ差し込まるる封筒の差し出し元に士官庁の青字

青切符つよく握られて皺皺なり。駅前の閑散、深夜便の灯り

夜もすがら列車振動止むことなし。横光『微笑』ひらきつつ青服の東京士官ひとりは

『閉店中』パイロンが朝方の商店街入り口に 広大な墓原吹き抜くる風

口笛を青服の東京士官鳴らす〈抱き続けよ希望を、如何なるときも〉



 三四郎は十八歳になるまで故郷の島を出たことがなかった。その島は瀬戸内にあり、きれいな穏やか