連載:福岡に行った気分になる

福岡に行った気分になるおいしい物語

7月23日は文月の「ふみの日」。近ごろめっきり手紙を書かなくなったという人も、こんな店があったらまた手紙を書きたくなるかもしれない。
 標野凪(しめの なぎ)さんの本書『終電前のちょいごはん――薬院文月のみかづきレシピ』(ポプラ文庫ピュアフル)は、福岡市中央区薬院が舞台の連作短編集。薬院は、上質なブティックやカフェの多いおしゃれエリアとして知られる。
 その薬院の裏通り、古いビルの二階にある「文月」は、三日月から満月の夜の間だけ開いている小さな料理店。「本が読めて手紙が書ける店」のコンセプトどおり、店内は本が並び、毎月23日の「ふみの日」には便箋と封筒を