「哀愁のパルテイーター南欧小説集」 五木寛之著 集英社文庫 1989年10月22日発行
ー 暗いはしけ
「ポルトガルに来ようと言い出したのも、彼がファドを聞きたいと言い張ってきかなかったためだよ」
遥かなるカミ二ト
秋山がブエノスアイレスの飛行場に着いた時、
アルゼンチンへ一人でやってくる
「なんだって、カミ二ト?」
「曲の名前だよ」
彼はため息をついた。わからないことばかりだった。相手の不しだらな行為の結果を、どうして自分が引き受けなければならないのか?だが、そんな理屈とは関係なく、若い秋山の心は、目の前に涙ぐんでいる少女の力になれることなら