帰る帰る!

ごまの98才の母は認知性が進み、時々
「帰る帰る。」
と、夜中に窓を開けて出て行こうとする。
兄が
「帰るって、どこへ? 外に出たら落ちるよ。
危ないよ。」
と、止める。
「助けてください、この人が引っ張って
返してくれません!」
「夜中だよ。近所に迷惑だよ。」
優しい兄の切なく戸惑う様子が
目に見えるようだ。

ごまも10年も前のことだが、
義母の世話で同じような経験がある。

そこでごまは、考えた。

認知症は終焉の準備ではないかと。

子や孫の顔も忘れ、死の恐怖も忘れ、
全てのこの世の苦しみ雑念から
解き放たれて、生まれる前の場所に
帰ろうとするの