手水舎に柄杓が戻っている。コロナ対策で近隣の神社仏閣から消えていた。
「陸地は亀の形してるんだよね」
エプロンを付けた太った女性が池を覗き込んで言う。杖を突いている。コロナがなければここはアジア系の言語が飛び交い混雑するのでさっさと通過する。
橋の欄干に近づく。確かに何匹も亀が乗っている中之島は、全体が亀の形になっている。反対側の中之島も見た。亀だ。
急な階段を、登る。
「あつっ!」
鉄製の手摺は日に当たり熱くなっている。掴まらないと怖い。日陰の部分は握っても大丈夫だ。
「いつまでこの階段を、登れるかな」
息子が言う。
線香の煙を誰にも邪魔され
連載:二人旅