第六章 ジェノヴァへ
帰国した二人は報告の為に柳沼弦一郎を訪ねた。
居間に通された二人は遠藤園子の手紙を差し出した。
「先生に宜しくと言ってました」
「そうか。悪かったな。先に紹介しとけばよかった」
柳沼はざっと目を通した。
「思った通りだ。実質一位と二位だったんだね。君たちの腕ならこうなると信じてはいたが、兎に角おめでとう。次はパガニーニの国際コンクールだ。これはクレモナよりはるかに強豪が集まる。そのつもりでね」
パガニーニ国際ヴァイオリンコンクールは、パガニーニの生誕地ジェノヴァで数年に一回開催される。
今回は丁度その翌年