132  「深い川」遠藤周作―毎日芸術賞受賞作品 読書感想

インドの仏蹟訪問ツアーで、一緒になった日本人観光客。その中で、新婚旅行先にインドを選んだ、三条夫婦は、日本の若者を象徴するように描かれていた。富裕な家庭に生まれた新妻は、フランスへ行きたかったらしい。汚く、ごみごみしたインドに来て、事あるごとにインドを厭い、夫と共に出歩くのさえ億劫になってきていた。写真家として、良い写真を撮ろうとする若い夫は、妻を残し、ガトーと呼ばれるガンジス川河畔の死体焼却場に向かう。そこは、写真を撮ってはならないとガイドから注意されていた場所であった。しかし、何かヒット作品を、と血気に逸る三条は、「ノープロブレム」と言いつつ、死体焼