横流れ氷の塵の煌めきよ



 その後を寒気がはしる鬼走り  能村登四郎

 ひとりずつ回転ドアにある寒気  大脇みや

 良く晴れて寒気の満ちた表行く アロマ

 眼前は日照る寒気と希望のみ  中村草田男

 寒気とは日の暮れてゆく花八ツ手  飯田龍太

 吾子見送り錐揉み寒気もどりけり  平井さち子 完流

 前方に見ゆ校門の中の寒気  廣瀬直人 帰路

 神の藁造る寒気の男たち  鈴木鷹夫 渚通り

 身ひとつやときに寒気を恃みとし  岡本眸

 空晴れてあまりの寒気一月に  アロマ

 朝の市馬も寒気にむせて咳く  寺田京子 日の鷹

 朝刊を寒気ひろげるごと開く  神長