ひとひらの雪

  昔のこと…この季節になると思い出す。
故郷青森に雪の華が舞う頃を。
通り過ぎてきた時間は儚くて、てのひらに
載せるとすぐに溶けてしまう淡雪のような
ものかもしれない。

 だが私は、淡雪がてのひらに載った時の
その冷たくて気持ちのいい感触だけは終生
忘れない。

 今年の青森の初雪は昨年よりも6日早くて
11月8日だったそうだ。

 深夜、カサカサと微かな音が聞こえる。
カーテンをそっと開くと辛うじて残る葉っぱが
ひらひらと落ちてやがて木々を丸裸にしていく。

 朝になるとその葉っぱが吹き溜まりになり
道々を褐色の絨毯にして埋め尽くしている。

その