リラ冷えの街に宵闇美しく



 花冷えに茶をのむ炭火おこしたる  細見綾子

 リラ冷えの街に宵闇美しく アロマ

 花冷や吾に象牙の聴診器  水原春郎

  花冷や壁をめぐらし蔵二階  猪俣千代子

 花冷やなだめすかして京の宿  永井龍男

 花冷や磨き清めし城の床  澤田緑生

 箸袋出て花冷えのなかの箸  鷹羽狩行

 花冷えの鮨てふ握り小さくて  能村登四郎

 花冷や神官走る坂下門  妹尾 健

 花冷えの箱に音する吉野葛  桂信子 初夏

 開花した桜の枝に雪積る  アロマ

 花冷えの小梯子かかる隠し部屋  能村登四郎

  花冷えの岩山を負ひ石仏  鷹羽狩行