連載:読書感想文

39、『江戸の備忘録』(磯田道史著)は、この国の歴史全体を見渡すのに、ちょうどいい視界を、確保できるような史実や人物や逸話を取り上げた、と

『江戸の備忘録』 磯田道史著 文春文庫
2013年11月10日発行
ー私は史書を読んできた。いまでも書庫蔵に棲みついている。書庫の中は暗く、コンクリートの床は冷たい。その床に坐り込んで、古記録の頁を、ゆっくりめくる。ただ読んでみたかっただけ、というような読書である。と、磯田さんは自らの読書、歴史の調査研究を楽しんでいる。
 さらに、「私はこういう書物蔵のなかの時間が好きで、一生、史書を読んで暮らせればいい、と思っていたから」と書く。磯田さんの、こういうところが僕は好きである。そうして、「古文書はそのままでは、なんのことやらわからないが、史家がこれを読んで