南木佳士「阿弥陀堂だより」

 主人公の孝夫は売れない小説家兼主夫。妻の美智子は医師でバリバリのキャリアウーマンであったが、妊娠した子どもが死産してから精神に変調を来たし、その療養のため孝夫の故郷である谷中村に転居することから始まる。孝夫が中学まで過ごした厳しい山村暮らしが描かれ、高校からは東京で暮らしていた父を頼り上京する。文学に邂逅し、漠然と小説家に憧れる。時は学園紛争の時代。孝夫の通う高校もクラス討論が行われ、授業は中止。クラス討論の虚しさから教室を抜け出した孝夫は同じクラスの美智子と出会う。

 孝夫は私立の文学部を卒業し就職するが、書いた小説が新人賞を受賞して小説家を目指し