連載:トビの聖性と零落  後編  ―『日本書紀』の「造綿者」(わたつくり)とは何か―

トビの聖性と零落  後編  ―『日本書紀』の「造綿者」(わたつくり)とは何か―

トビの聖性と零落  後編 

―『日本書紀』の「造綿者」(わたつくり)とは何か―



改めて、造綿者(わたつくり)とは何か

 「漁市に馳(と)んでいっては魚を窃(ぬす)み、その腸を攫(つか)み、(略)林野にあっては鳥の雛を飢えた烏と争い、江湖にあっては魚腸を沙鴎と赫(と)りあう」(『本朝食鑑』第3巻 東洋文庫)「鳶」の項より。
 結論をさきに言えば、造綿者(わたつくり)とは腸(はらわた)をつつきだす者、つかみ出す者ではないか。
まずワタとはなにかを考えてみよう。日本国語大辞典で「わた」の項をみると、「海」「腸」「綿・棉・草綿」がでてくる。
 「海」の